最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
慧さんが私を愛していないのはわかりきっているから、淡々と上辺の言葉しか口にしないが、心臓はバクバクと脈打っている。

自分勝手なこの願いを聞き入れてもらえるだろうか……と、緊張と不安で太ももに置いた手をぐっと握ったときだ。


「断る」


厳しい顔をした彼にきっぱりと拒否され、私はしゅんと肩を落とす。

夫婦生活を送る中で、慧さんは厳しいだけでなくわりと寛大なところもある人だと気づいたのだけど、こんな破廉恥な頼みはやっぱり無理があるか。


「……処女は面倒ですか」
「よくそう聞くが、そんなことを抜かす男の気が知れないな」


彼は腕組みをして〝くだらない〟と言うように素っ気なく放った。

処女であることがネックではないとすると……と考え、さらにずーんと落ち込む。


「じゃあ……私に魅力がないと」
「一絵のことはちゃんと女として、妻として見ている」


意外な言葉が返ってきて、ほんの少し救われた気分で目線を上げた。慧さんにとって、私はまったく眼中にない存在というわけではなかったらしい。

彼は少し困ったように眉根を寄せ、私と目を合わさずに続ける。
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