最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました～トツキトオカの切愛夫婦事情～

その後任は息子が受け継ぐパターンが多いと思うが、お義父様は今の言葉通り、適性がある人間なら誰に任せてもいいと考えている人。

というのも、お義父様自身も前社長の血縁者ではなく、実力で上り詰めたからだそうだ。

現在も、すでに社の中で次期社長の候補はいるらしい。慧さんがジョインプレッションに入社したのは、コンサル以外にやりたいことがあるとお義父様も理解していたからだろう。

エムベーシック社長の跡を継がせられるのも、お義父様のご厚意があってこそ。なので、父は今も「恩に着ます」と丁寧に頭を下げている。

ちなみに、婿養子を取らなかったのは、私が断固反対したせいでもある。結子さんがお嫁に行った状況で、慧さんまでお婿さんにさせたら畔上家に対して申し訳が立たないから。

私たち松岡家はというと、父の弟の息子、つまり私の従兄弟がいるので血が途絶えることはないだろう。

それにしても、慧さん自身は親会社の社長になることをどう考えているのだろうか。父も同様に思ったらしく、慧さんに確認するような目を向ける。


「一番大事なのは、慧くんの気持ちなんだが……」