最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
皆の視線が集中するも、彼はまったく動じずに背筋を伸ばしている。

父を見つめて、「私のような人間に期待してくださって、本当に感謝しています」と頭を下げ、さらに続ける。


「その期待にはぜひ応えたいですし、新しく挑戦したいこともある。松岡社長が作り上げたエムベーシックのよさを大切にしながら、目標を実行するために積極的に取り組むつもりです」


凛とした佇まいで、しっかりとした口調で話す慧さんを、私は改めて尊敬する。

彼にはなにかやりたいことがあるらしい。それを実現させられるように、私にもできることを探して、これからも公私共に支えていきたい。

父も安堵と信頼が交ざった笑みを浮かべ、力強く言う。


「頼むよ。未来の会社も、一絵と、これから生まれてくる子のことも」


こちらをちらりと一瞥した父と目が合うと、その瞳は慈愛に満ちているように感じた。

それに対し、慧さんはしっかりと頷く。


「全力で守り抜きます」


普段は忘れかけている父の愛情と、慧さんの決意に胸が熱くなる。いい家族に恵まれて、本当によかった。

私はそっとお腹に手を当て、〝あなたの幸せは約束されているよ〟と、心の中で赤ちゃんに語りかけた。


< 128 / 274 >

この作品をシェア

pagetop