最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
苦しげに吐き出される言葉たちは、彼の想いが冗談ではないと確信させられるものだった。

知らなかった、高海がそんなふうに思っていたなんて。私、ずっと彼に無神経な言動をしていたんじゃないだろうか。

これまでのやり取りを振り返りたくなるも、ふいに手の力が緩められてはっとする。彼は視線を落としたまま、私からゆっくり身体を離す。


「一絵が社長を好きな気持ちは絶対に変わりっこないってわかってる。こんなふうにしたって、どうにもならないことも。でも……社長が本当にお前を愛しているのかどうかが伝わってこないから、潔く諦められないんだよ」


いくらか落ち着いた口調になったものの、まだ棘があるように感じる最後の部分に引っかかりを覚えた。

慧さんの態度は職場では以前と変わらないから、高海や周りの人たちには愛がないように見えるだろう。

でも、真実は私だけが知っている。慧さんは、ちゃんと私を愛して──。

愛して……くれている、よね?

反論しようとしたのに、自信を持って言い切れないことに気づく。たぶん、慧さん自身からその気持ちを言葉にして伝えてもらっていないからだ。
< 149 / 274 >

この作品をシェア

pagetop