最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
大切にされている実感は確かにある。それは彼から私への愛情があるからだといつの間にか思い込んでいたけれど……。


『一絵が好きだ』


今しがたの高海みたいに、熱い告白をされたことはない。大切にしてくれているのは、ただ単に妊娠しているせいなのかもしれない。

わずかに疑惑が芽生えて黙り込む私を、高海はずっと合わせなかった瞳に力強さを湛えて見据える。


「もし社長が十分な愛を与えていなかったり、お前が無理して結婚生活を続けているなら放っておけない。……奪いたい、全部」


そのまっすぐな想いが、胸を掴んで締めつける。直後、下降が止まったエレベーターのドアが開いて、彼は私に背を向けた。

……私なんかを、そこまで好きになってくれたことには素直に感謝したい。けれど、高海の気持ちには応えられない。

慧さんから〝愛してる〟という明確な言葉はもらっていなくても、彼は『二度と離さない』と言ってくれた。『俺を信じてくれ』とも。

私はその言葉と、彼を愛している自分の気持ちを信じる。これからも彼と一緒にいる決意は揺らがない。
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