最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
決まりが悪くて目を逸らしつつ、「えっと……」と言葉を濁していると、彼が意外そうな目をして言う。


「お前……処女だったのか」
「そっち!?」


思わずツッコんでしまった。いや、この歳まで処女だったことを知られたのも気まずいのだけど。

「ひとまずこぼれた水をなんとかしてきて」と促し、高海は食事を提供しているカウンターへと向かった。トレーを替えて戻ってきた彼は、最初から私たちと約束していたかのごとく、とても自然に麻那の隣に座る。

そして、ほかほかの美味しそうなカツ丼に手もつけず、テーブルに肘をついた片手を額に当ててうなだれた。


「そうか、ついに一絵も名実共に人の妻に……」


深刻そうにため息を吐き出し、ずーんと沈む彼を奇妙に思い、私は眉をひそめて問いかける。


「なんでそんなに残念そうにしてるの?」
「あっ、高海くんも実はDTとか」
「違うわ」


麻那のひとことに、高海はバッと仏頂面を上げて即否定した。

この人はエンジニアとして将来を期待されているホープで、容姿もノリもよく、女子からの人気も高い。それなりに経験はあるだろう。
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