最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
これまで見てきた一面とはまた違い、遠慮せず自分の思いをぶつけてくる彼女は新鮮で、拗ねたような顔も可愛らしかった。

同時に、俺が歩み寄ろうとしなかったせいで、彼女は素を見せられなかったのだと理解した。

離婚話がきっかけで以前よりわかり合えるなんて、皮肉なものだ。……いや、彼女を大切にしなかった俺が愚かなだけか。

今、一絵に抱いている感情の正体をはっきりさせたい。もっと近づいて、触れて、すべてをさらし合えば確信できるかもしれない。

遅いのは重々承知している。それでも、確かめずに終わらせることなどしたくなかった。


──唇を奪い、彼女の素肌を暴くと、胸の奥がじりじりと焦がれるような感覚を覚えた。

家政婦ロボットだなんて思っていて、ごめん。そう謝りたくなるくらい、彼女の反応はいちいち可愛くて、胸をくすぐらされた。

単に欲情したというよりも、一絵のすべてが欲しくなったというほうがしっくりくる。


「慧、さん……っ」


一生懸命、俺の名を呼んで抱きついてくる彼女が、素直に愛おしいと感じた。
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