最後の一夜のはずが、愛の証を身ごもりました~トツキトオカの切愛夫婦事情~
その気持ちが上乗せされているのか、愛撫しているだけでこれまでにない快感を覚えていた。ひとたび身体を繋げれば、すぐに限界を迎えてしまいそうなほど。

熱い中を慎重に攻めながら堪えていると、一絵が俺の腕をぐっと掴む。


「あっ……! だめ、待って」
「痛いか?」
「ちが……なんか、おかしくなりそ……」


涙目で訴える彼女の快感が高ぶっていることに気づき、自然に笑みがこぼれた。指を絡め、耳にキスをして囁く。


「なればいい。乱れる姿も、恥ずかしいところも、すべて見せてくれ。君の全部を、俺に」


それを心と身体に刻み込んだら、二度と忘れないから。

君も覚えていてほしい。不完全でも、夫婦としての大切な時間を過ごしたことを。

余裕はなくなり、再び律動を始めると、一絵はとびきり甘い声を小さく上げて身体を震わせた。

離れたがっている彼女を、もうこの腕で抱けることはないのだろう。今この瞬間も、彼女はただ経験を得たかっただけで、俺への愛情はない。

それがこんなにも胸を苦しくさせる理由は、ひとつしかない。

今になって一絵への想いを認められた自分を呪い、激しく後悔しながら、俺は届かぬ愛を吐き出した。

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