独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
「……俺ってそんなに薄情なヤツに見える?」
不意に彼がそう言ったので顔を上げると、苦笑した彼がポンと私の頭の上に手を乗せた。そのまま優しく髪を撫でられていると、不思議と素直な気持ちが口をついて出る。
「薄情……とは思いませんけど。そもそも小田切先生は引く手あまたなんですから、こんな面倒くさい女なんかに構う必要、ないんじゃないかと……」
我ながら、なんて後ろ向きな発言なのだろう。この年になって初めて、恋愛って私の弱点だったんだなと思い知らされた感じだ。
「愛花先生」
「……はい」
「今、すっごく俺がうれしいの、わかる?」
「……はい?」
いい雰囲気だったのに行為を拒まれ、そのうえウジウジと落ち込む面倒な妻を前に、なにがうれしいと言うのか。
怪訝な顔で彼を見つめると、小田切先生はとても穏やかな笑みを浮かべて言った。
「そんなに悩む理由って、俺に嫌われたくないからでしょ?」
「え……?」
「愛花先生、きっと、自分でも気づかないうちに、俺にハマってる」