独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

 やっぱり、怒ってる……。別に、今さら私が旭に特別な感情を抱くことなんてないのに。

「……断った方がよかったですか?」

 そう聞き返すと、椅子を回転させてこちらを向いた彼が、鼻を鳴らして不快そうに笑う。

「それ、俺に聞かないとわかんないこと?」

 私は口を噤んだ。言わなくても察しろ、ということなのだろう。

 だからって、そんなケンカ腰にならなくたっていいじゃない……。

 次第に心が刺々しくなってきた私は、仕返しのように尋ねる。

「小田切先生こそ……黒瀬さんとなんのお話を?」
「別に。『結婚したって本当ですか?』って聞かれただけ」

 あの黒瀬さんが、それだけで終わるかな……。彼を信用しきれず、心の棘がまたひとつ、またひとつと増えていく。

「なんて答えたんですか?」
「……してるけど、〝ただの契約結婚だ〟って言っといた。愛花先生もその方がいいでしょ? 夫がいても違う男とデートの約束しちゃうくらいだから」

 皮肉げに言う彼に、思わずムッとした。

「別に、デートの約束をしたわけじゃ……!」

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