独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「きみたちさ、俺の大事な奥さんを侮辱するのはやめてもらえる?」

 彼女らのそばで純也の声がして、私の箸が止まった。

 顔を上げると、口元には微笑を浮かべつつも目が全然笑っていない彼が立ったままナース三人組を見下ろしていた。ナースたちの顔は見えないが、急にぴんと伸びた背筋に、緊張感が漂っている。

「彼女のことは、俺が自分の意思で選んだんだ。院長は関係ないし、周りにとやかく言われる筋合いもない」
「いえ、私たち、侮辱なんて別に……ねえ?」

 中央にいた脳外のナースがそう言ってごまかそうとすると、純也の眉がぴくっと震えて、口元から笑みが消えた。

「ちなみに、彼女の指示を無視しようとかっていうのも、聞こえたよ。きみたちのことは優秀なナースだと思っていただけに残念だ。このことは、看護師長に報告しておく」
「ま、待ってください小田切先生、それだけは……!」

 ガタっと音を立てて席を立ち、彼の白衣にすがろうとするナースたち。その必死さが、なんだか哀れに見えてきた。

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