独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
ナースというのは、私たち医師より患者さんに近い存在だ。それゆえに、甘えられたりワガママを言われたり、時には暴言を吐かれたり……医師とは別のストレスにさらされながら、日々患者さんたちをケアしている。
絵に描いたような白衣の天使もいるのだろうが、裏の顔がなければやっていられないタイプのナースもいるだろう。嫌いな医師のことを愚痴って、ストレスを発散するタイプのナースも。
だからって、その愚痴が全部本気というわけじゃないはずだ。少なくとも、仕事をおろそかにするなんていうのは、きっと口だけ。
だから、別にいいのだ。人間には相性があるし、私も今さらナース達に好かれたいとは思っていない。私は、純也がかばってくれただけで十分だ。
私はそこまで思うと席から立ち、穏やかな表情で彼らのもとに近づいていった。
「あ……愛花」
「もういいよ純也、そこまでしなくて」
彼にそう声を掛けると、ナースたちがますますぎょっとする。
「さ、早乙女先生も……いらっしゃったんですか」
口の端をひくひくさせて愛想笑いをする脳外のナースに、こちらは満面の笑みで対応する。
「ええ。ちなみに、全部聞いてた」
「も、申し訳ありません……! あの、つい口が滑ったというかなんというか!」
早口で言い訳を並べ立てられ、私は苦笑する。