独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
しばらく沈黙が続いていたが、やがて小田切先生が戸惑ったように私に尋ねる。
「ええと……愛花先生って、俺のこと好きでもなんでもないよね?」
「はい」
「そんな即答しなくても」
苦笑いの小田切先生に、私はこの結婚の利点を説明する。
「大事なのは〝結婚した〟という事実だけです。私は家族のプレッシャーから逃れるため。そして小田切先生は、ナースやMRたちからのうっとうしい誘惑をかわすため」
「……なるほど。利害一致の契約結婚ってわけか」
小田切先生が、納得したようにうなずく。
「お互いの家族を納得させるために、一緒に住むことにはなると思いますが……ふたりとも当直やオンコールがありますし、そうでなくても遅くまで病院に残ることが多いじゃないですか。なので、そんなに煩わしい生活にはならないかと」
「つまり、入籍して一緒の家に住むだけ?」
「ええ。ルームシェアに近い感覚かもしれません」
そう考えれば、彼にとって私は悪い相手ではないはずだ。
小田切先生は腕組みをして数分沈黙したのちに、口を開いた。
「いいよ。しよっか、結婚」