独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する
颯の口もとは笑っているが、隠しきれない無念さが瞳に滲んでいて、美波ちゃんに未練があるのは明白だった。
だけど、彼女が別れたいと言うなら仕方ないのか……。
恋愛のことで私が助言できることなどあるはずもなく、ただ残念に思うしかない。
「だから、父さんとじーちゃんからの〝孫の顔を見せろ〟攻撃。しばらくは姉ちゃんの方に一点集中で向かうと思うけどよろしく」
「えっ」
颯の言葉に、私は思わず口をぽかんと開けて固まる。
でもそうか……颯が彼女と別れたということは、矛先はこっちに向くんだ。
ともに妻を亡くしている父と祖父は、ドラマの女優に熱を上げるのも日々の楽しみだが、それ以上に、私か颯のどちらかが結婚して、初孫と対面することを心から楽しみにしている。
これまでも多少私へのプレッシャーはあったものの、颯と美波ちゃんのゴールインを待つ方が早いと踏んでいたのか、そこまで煩わしさはなかった。
しかし、頼みの綱だったふたりが破局した今、彼らの期待は全部……。
悪い予感を抱いたその瞬間、居間からどすどすとふたり分の足音が近づいてきて、父と祖父がそろってダイニングを覗いた。どうやらドラマが終わったらしい。