独占欲強めな外科医は契約結婚を所望する

「愛花、ちょっと話がある」

 そう私を呼んだのは父で、すっかり警戒している私は首を横に振った。

「……疲れてるから、今度にして」
「そう言うなって。ほら、愛花のために買ってきたんだ。最新号のザクシィ」

 ひええ、やっぱりそっち系統の話だった!

 お父さんってば、その雑誌をレジに持っていくの恥ずかしくなかったわけ?

「ぜっったい読まないから!」

 私は完全拒否の態度でメンチカツを頬張り、慌ててご飯をかきこむ。

 そして口をパンパンにしながら「もうおふおあいってえうああ(もうお風呂入って寝るから)!」と足早にダイニングを後にした。

 結婚とかそういう話は、本当に勘弁してほしい……。

 脳外科医というのは本当に気力も体力もいる仕事で、プライベートで遊んでいる暇なんてほとんどない。ベテランの先生方は適度に息抜きしているようだけれど、それでも既婚者はひとりもいない。

 忙しくて恋愛する時間がないのはもちろん、脳外科医という仕事を理解してくれるパートナーを見つけるのも、なかなか難しいのだろう。

 父と祖父には悪いけど、私は一生独身だ、きっと。

 そんなふうに結論づけると、私は女子力ゼロの着古したスウェットに着替えるため、自室のクローゼットを開けるのだった。

< 9 / 224 >

この作品をシェア

pagetop