背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 当たり前だが、なんだか急に居心地が悪くなる。


「何にしましょうか?」

「マティーニ」

「かしこまりました」


 これって、三人で飲むって事なのだろうか?


「ああ、もう少し早くくれば良かったな。そしたら、私が先だったのに」


 ハイヒールの女は言った。
 どういう意味なんだろうか?

 彼は何も言葉を返さず、グラスを口に運んだ。


「ねえ? この間の埋め合わせしてくれるんでしょ? 急に帰っちゃったじゃない。あの後、へんな男にからまれて大変だったんだから」

 ハイヒールの彼女は、カウンタに両肘を付き頬杖をついて、彼を上目遣いに見た。
 まるで自分が彼と関係がある事を、私に向けて言っているように聞こえるが……
 別に私には関係ない。この男が、そんな奴だって事ははなから承知だ。

 目の前の、ジンフィズをぐっと飲んだ。


 彼は、何も言葉を発しない。いや? 発せないんじゃないだろうか?



 カタンッ

 ドアの開く音がした。


「いらっしゃいませ」

 また、客が来たようだ。


 コツコツと足音が近づいてくる。


 まさか?

 また、私の横で足音が止まった。
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