背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 ガタンと、ドアの開く音がすると。

「いらっしゃいませ」

 バーテンダーの落ち着いた声に、客が来たのだと分かった。


 私の座る席から、客の顔は見えない。
 ちらりと顔を上げた彼の表情が、一瞬固くなった。


 背中に、ハイヒールの音が響く。
 根拠はないが振り向かない方がいい気がする。


 通り過ぎるかと思ったハイヒールは、ピタリと私の横で止まった。
 甘ったるい香水に、鼻がグズグズする。


「悠麻さんじゃない。居るのなら連絡くれればよかったのに」


 その声は高くて綺麗だが、明らかにトゲがある。


「こんばんは」


 彼は、素っ気なくハイヒールの女に挨拶した。
 それ以上、何も言わない。


 それが気に入らないのか、彼女は私の存在など無いもののように彼の横に座った。
 カウンターの席で、彼をハイヒールの女と私が挟む形になってしまった。
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