背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 冷蔵庫の扉を開けると、今朝彼女が用意していたタッパーが積み重なっている。若干斜めに置かれている事に、ふと笑みがもれた。

 タッパーを抱えテーブルへと向かった。
 彼女を空港へ送り、部屋に戻った俺の真っ先にとった行動だ。

 蓋をあければ、ポテトサラダや魚の煮つけが次々と出てくる。本当ならご飯を炊いたほうがいいのだろうが、そんな事を俺がするわけない。おかずだけでもいいと、最後の蓋を開ければ、ほどよい数のおいなりさんが並んでいた。
 俺が飯など炊かない事分かって用意してくれたのだろう……

 そう思うと、なんだか胸が寂しいという感情を出しそうになって、慌てて箸を持った。
 やっぱり旨いなと思うが、一人で食べるのは味気ない気がして、キッチンの方へ目を向ける。
 殺風景だったキッチンは、いつの間にか、色とりどりの物が置かれて、まるで息を吹き返したようだ。そりゃ、俺も調子にのって買ってしまった物もあるが、こんなキッチンにしてしまって彼女はどうするんだろうか?


 たった三週間ほどだけど、しっかりと彼女の住跡が残っている。姉ちゃんが出って行った時は、正直清々した。だけど今は、この部屋に一人は、なんだか隙風でも吹いているかのように、寒々していた。

 食事の後片付けをしようと、席を立つと、テーブルの上のスマホが震えた。画面を見て、一瞬固まった。
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