背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
こんなはずじゃなかった…… 悠麻
  自分の意志とは関係なく、ホテルのラグジュアリールームへと迷いこんでしまった……

 この部屋には何度も足を運んでいるが、すべて部屋が完成する前だ。
 かなりこだわってデザインした家具が、丁寧に手入れされ置かれている姿に嬉しく思う。


「わーっ 凄い!」

 彼女の興奮した声が、さっきから何度も聞こえてくる。


 二次会と言っていた両親達は、リビングにソファーに座り、なにやらこそこそと話をしていて、飲んだり食べたりする気配は全く感じられない。


 そのうち、うまく抜け出せるチャンスが来るだろうと思っていた。



「なんて、重みのあるデザインかしら…… こんな、テーブルで食事出来たら、楽しいでしょうね……」

 思わず声のする方へ目を向けてしまった。

 彼女が、ダイニングのテーブルの上にそっと手を置いていた。
 そうか、このホテルに宿泊する客もそんな風に思って食事をとっているのかもしれない。
 そう思うと、少し胸の奥が熱くなる。

 テーブルに触れている彼女を見ていると、康介さんがチラリと俺を見た。そして、何か言いたげに笑みを向けてきた。


 異様な雰囲気を感じたのはそれから間もなくだった。


 彼女がこの部屋に泊まる事になったようだ。
 それなら、俺もそろそろ帰っていいのではないかとドアへと向かったのだが……


「悠麻くんも、以前から泊まってみたいと言っていたよな」

 何故か、康介さんに腕を掴まれた。


 そりゃ、自分のデザインした家具が置かれている部屋だ。客として宿泊してみたいとは、言った事があるとは思うが、今言わなくてもいいだろう?



「そうだったのか? それはなら良かったじゃないか。しっかりお相手するのだぞ」


 父が名案とでも言うように、手を叩いた。


 はっ? 今日泊まりたい訳じゃない。
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