背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 この状況を考えれば考えるほど腹立たしくなってくる。

 彼女の方をチラリと見ると、眉間に皺寄せて下を向いている。彼女だって、この状況を望んではいない事は確かだ。


「あんたの親、どういう考えしてんだよ? 普通、娘を男のいる部屋に残したりするか?」


 彼女を見たら、そんな言葉が出てしまった。
 この時俺は、今までの紳士的な振舞いなど、すっかり飛んでしまっていた。彼女に言っても仕方ないと分かっていても、感情を抑える事が出来なかった。


「はあ? うちの親の問題だけじゃなでしょ? この部屋用意したのは、あなたのお父様じゃなくて? それに、兄弟までグルになって、こんなの監禁よ! 訴えてやるわ!」

 うん?
 彼女もさっきまでの、いかにも気品ある女性のオーラは消えていた。しかも、俺を睨みつけている気がする。


「訴えたいのはこっちだって同じだ! 俺は何も知らん! 」 


 つい、売り込言葉に買い言葉だ。
 大人気ないとは内心思うが……


「男のくせに無責任じゃないの! だいたい、その気もないのに、なんで見合いなんてするのよ!」

 くそっ!
 俺だって、断れるものなら断っていた。
 ああ、俺は無責任な男ですよ。


「あんただって、同じだろ? 見合いぐらい断れよ!」


「はあ? あんたこそ、三十七にもなって見合いって? 今まで何をやっていたのよ! 女と遊んでるからこんな事になるのよ!」


「お前に言われたくはない! 俺は、そもそも結婚なんてするつもりなんて無い!」

 本当にムカつく。
 だから、女とは深くかかわりたくない。

 
「あらそう? お生憎様。私も、結婚なんてする気ないの!」


 彼女は、クルリと俺に背を向けて座った。
 俺も彼女に背を向けて座った。

 まるで子供の喧嘩だ。
 少し冷静ならなければと思う。

 このまま、どうすりゃいいんだよ?

 つい感情的になってしまって、彼女にどんな言葉をかけりゃいいのかも分からない。

 心の底から嫌だと思う。
 こういう状況……


 女とは、さらり付き合いうくらいが丁度いいと思ってきた。
 だから、喧嘩や言い合いになる前に、するっと逃げてきた。

 
 ドサッ!
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