背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 背中に鈍い音を感じて振り向いた。


 彼女が、ソファーに横たわっていた。
 正直、何しているのか分からず、恐るおそる近づいた。


「えっ? お、おい、どうした?」


 彼女の顔を覗き込むと、苦しそうな声を上げている。顔は真っ青で、さっきまでの感情的に言葉を吐いていた時とはまるで違う。


「く、苦しい……」


 さすがに俺も焦った。


「マジか? 顔が真っ青じゃないか! ちょ、ちょっと待ってろ」


 慌てて受話器を手にして、フロントを呼び出した。


「彼女が、苦しがってる救急車を頼む!」

 彼の、緊迫した声が部屋に響いた。


「はい、フロンンとです。悠麻か? どうした?」


 なぜか電話に出たのは康介さんだった。」


「えっ? あっ、康介さん…… 彼女が苦しがってるんだ。本当だ!」


「あー。そういえば、美月さんのお母さんが、帯をキツく締め過ぎたと気にされていたな。帯を緩めてみたらどうだ? それでも、容態が変わらないようなら、連絡くれ」


「はっ? 帯? ああ、分かったよ」

 
 取り合えず受話器を置いて、急いで彼女の元へ向かった。


「お、おい! 帯が苦しいのか?」


 彼女は苦しそうに顔を上げて頷いた。

 頷くことが精一杯かもしれない。


「自分で脱げるか?」


 やはり彼女は、首を横にふるだけだ。


「いいか? 帯外すぞ!」


 俺は必至だった。
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