背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 恐るおそる薄っすらと目を開けた。

 そこには、彼の顔があった。
 しかも、こちらを向いている。
 どうも、同時に寝返りを打ったようだ。


 ち、近すぎる……


 私の顔は、ほぼ彼の胸の中だ。


 それに、あ、足が……

 思いっきり寝返りを打ったため、バスローブが置き去りになってしまった。
 シーツの中で、さらけ出してしまっている足が、彼の足にぴったりと引っ付いてしまっているのだ。
 触れているのは、足だけではない気がする……
 下着も付けていないのに……


 どうしよう?
 寝たふりをしているのに、バスローブを引っ張ってよいものなのか?

 でも、このままでは、さすがにまずい。
 彼が、起きているのか? 寝ているのかもわからない。

 目を瞑ったまま、もぞもぞとバスローブを引っ張る。


 うん?


 彼も、もぞもぞと動きだした。
 多分、バスローブを引っ張っているのだろう?


 彼も起きているって事?
 起きていて寝返りを打ったのだろうか?


 たまらずに、目を開けてしまった。

 あっ!

 バッチリ彼と目が合っていた。
 彼も同時に目を開けたのだ。

 目を逸らす事も出来ずに、お互いシーツの中でバスローブをひっぱり大事な部分を隠している。

 しばらく、彼と目があったままだ。


 こういう時、どうすればいいのだろう?


「お、おやすみなさい……」


 この言葉が正しいのかは分からないが、取り合えず目を閉じた。


「ああ……」

 彼から言葉が返ってきた。
 これでいいようだ……


 だけど!
 いくら目を閉じても、この状況じゃ眠れるわけがない!
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