背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
 目が合うが、彼は無言のまま立ち尽くしている。

 恥ずかしい……

「あ、あの、ちょっと寝てみたかっただけなので……」


 私は起き上がると、ベッドから降りようと足を下ろした。


「どこに行くんだ? 寝るんじゃないのか? まさか、まだ飲む気か……」



 彼はベッドに腰かけ、からかうような目を向けてきた。


「もう、飲みませんよ。ソファーで寝ようと思っただけです」


 私は、立ち上がって彼を睨むように見た。




「これだけ大きなベッドだ。端と端で寝ればいいだろう?」


 そう言うと彼は端の方で横になり、私に背を向けた。



 ベッドで寝たい。
 でも、彼と同じベッド寝るなんて、常識的ではない気がする。しかも、胸まで触られているのに。


 でも、彼は、そんな事おかまいなしに、ベッドの上にいる。
 私の気にしすぎなのだろうか?
 いや、そんな事はないと思う。

 身動きしない彼は、もう寝てしまったのだろうか?


 私はベッドに座り、シーツの中へと足を入れた。
 ベッドの端に、彼に背を向けるように横になった。



 すぐに眠りにつけるかと思ったのに、なかなか眠気がやってこない。
 あまり動いてはいけない気がして、じっと身を固め眠気を待つ。

 だが、眠気が来るどころか、目は冴えて行く一方だ。 
 その上、なぜだか背中が熱い。
 熱いのに、背中が寂しい。
 背中合わせって、相手に拒否されているような気持ちになってしまうものだと知った。

 こんなに、寂しいものなのだ……


 たまらなくなり、身体に力をいれた。

 寝ているふりをしていれば大丈夫。

 いち、にーのさん!


 思いっきり、ベッドの上で寝がえりを打った。



 えっ?
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