背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇

「なんだ、先に食べていていいって言ったのに。腹減っただろう?」


 シャワー浴びてを戻って来た彼も、バスローブのまま席にに着いた。

 一人筒用意されている鍋に、チャッカマンで火を点けた。煮えてきたら、ご飯を入れるよう準備されている。野菜の煮える出汁のきいた良い匂いがする。最後に、溶き卵を入れて蓋をする。

 「美味しそう……」


 思わず漏れた声に、彼がふとこちらを見た。ふっと向けてきた彼の笑顔は、胡散臭くない、自然な笑みのように見えた。


 黙ったまま向きあい、雑炊を口に運ぶ。


 正直、夕べの事が、頭から離れず変に意識してしまう。彼の顔を見ると、心臓の音が激しく動きだしてしまい、どうにも落ち着かない。

 それに比べ、彼は落ち着いたものだ。
 きっと、こんなシチュエーションなんて慣れているのだろう。
 あまりに、平然としている彼に、胸の奥でなんか鈍い音をたてた。

 なんだろう、この感覚……



 私は、余計な事を考えないように、雑炊を食べる事に集中した。


「美味しい……」


 彼はなぜ、雑炊を選んだのだろうか? 
 私が、食べたいと思っていたものを……


 やっぱり、女慣れしているんだな……


 きっと、彼にとってはよくある事なのだろう。


 また、胸の奥が鈍い音を立てた。

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