背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
消えない見合い……美月
  誰も居ない家で、ソファーに寝ころぶ。着物も脱ぎ捨てた。

 なんだったんだろうか?


 自分の家の見慣れた部屋で、いつものように寝ころんでいるのに、何かが変わってしまったような気がする。
 たった二日間、あのラグジュアリールームで過ごしただけなのに。

 

 夜遅くになって、ガタガタと玄関のドアが開いた。


「ただいいま」


 聞きなれた声が響いてきた。

 そうだ、この二人が企んだ事だ。
 パパとママも、私達がどうなったのか知りたいはずだ。絶対に悟られたくない。


 見合いは上手く行かなかった、それでいい。
 彼の方から、断ってくるはずだ。


「おかえり」

 私は、何事もなかったように二人を迎える事にした。

「良かったわよ、北海道。これ、お土産ね」


 一般的な北海道土産のお菓子の入った箱が、テーブルの上にならんだ。


「良かったじゃない、旅行出来て」


 私は、テレビのリモコンに手を伸ばした。
 部屋の中に、テレビの音声が響く。
 こんな時間までテレビも点けていなかった……
 私は、何をしていたんだろう?


「美月はどうだったの? ラグジュアリールームなんて、めったに泊まれないわよ」

 母の知りたい事は、そこではないだろう?


 だが、私はあえて言った。


「本当に素敵だったわ。食事も美味しかったし。テラスで缶ビールは飲めるし、大きな画面で、裂きイカ食べながらテレビも見られたし。お風呂から夜景も見えるのよ」


「えっ? 缶ビール?裂きイカ? …… それで、悠麻さんは?」


 ママの目は、驚いたように見開いている。
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