背中合わせからはじめましょう  ◇背中合わせの、その先に…… 更新◇
「知らない。忙しいみたいでずっと部屋にこもって仕事していたから、ほとんど会話もしていないし」

 我ながら、良く出来た回答だと思う。


「そう……」


 ママは、納得いかないようで、何か言いたそうな顔をしている。


「明日早いからもう寝るわ。それから、お見合い、ちゃんと断っておいてよ」


 これ以上話をしていたら、言わなくてもいいことを言ってしまいそうだ。
 ママがソファーに座ると同時に、私は立ち上がった。



「えっ? 断るの?」


「だから、結婚はしないって言っているでしょ」



 私は、リビングのドアを閉めた。



「あっー! 着物くらい、もう少しきちんとと畳んでおきなさいよ!」


 母の声が、後ろから響いてきたが、聞こえなかった事にして階段を上った。


 着物くらい、きちんと畳んでか?
 彼は、当たり前のように着物を畳んでいた。
 服が散らかっていると気になると言っていた。几帳面な人なんだろうか?

 どうでもいい事だ。


 頭を大きく横に振った。
< 88 / 213 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop