約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

幼馴染みでは いさせない


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 午後8時30分。
 もう誰もいないだろうと思っていたマーケティング部のあるフロアに寄ってみると、アクリル製のドアの向こうが明るい事に気が付いた。もしかしてまだ誰かいるのかもしれないと思ってドアをぐっと押し開ける。

 中に入って視線を動かすと、デスクにかじりついて作業をしていた人物がゆっくりとこちらに振り返った。

「愛梨」

 視線が合ったので名前を呼ぶと、愛梨も驚いたらしく『え、ユキ!?』と小さな声を洩らした。

「ど、どうしたの…? こんな遅くに」
「欲しい資料があるんだけど。愛梨、わかる?」

 近付きながら問いかける。どうやら愛梨は1人で残業をしていたようで、フロア内には他に誰も居ない。シャツの袖を捲って前髪をヘアピンで留めるのが作業に集中するスタイルらしく、額が出ている愛梨も新鮮で可愛い。

「総務に聞いたら、仕様書は開発部かマーケティング部に聞いた方が早いって言われて。これなんだけど」

 資料タイトルと管理ナンバーが記載されているメモを見せる。

 本来は愛梨ではなくプロジェクトチームに確認するのが筋だが、用意されたリストと資料の数が合わない事に気付いたのはつい先程だ。慌ててプロジェクトチームに連絡するも、メンバーの社員は既に退社後だった。仕方がなく総務の担当者に聞くと、今度は別部署への問い合わせを案内された。
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