約束 ~幼馴染みの甘い執愛~
愛梨はもう、雪哉との約束を追わないと決めた。だからもうショートヘアにこだわる理由はない。雪哉が見つけやすいかもしれないから、なんて幻想に囚われる必要もない。
それならば初めて出来た彼氏の要望ぐらい、出来るだけ聞いてあげたいと思う。
弘翔と付き合い始めた当初は、雪哉との約束を忘れるために弘翔の想いを利用しているように感じていた。
不純な動機で付き合う事を申し訳ないと思っていたが、仲が良い同期の延長で始まった弘翔との交際は、思いのほか気が楽で充実していた。
徐々に弘翔と接する時間が増え、他愛のない出来事をささやかな思い出として共有出来ることがとても楽しかった。
あのまま弘翔の手を取らず雪哉との約束を待ち続けていたら、恋人がいる楽しさを一生知らずにいたかもしれないと思うと、これでよかったのだと思える。
「シャンプー代、俺が出すよ」
「別にいいよ。そんなの、学生時代の話なんだから」
髪が長いとシャンプー代がかさむと思ったのか、弘翔が笑いながら提案してきた。
男性は勘違いしがちだが、女性の髪は長ければ長いほど、シャンプーよりもコンディショナーの方が消費が早い。
愛梨はショートヘアだが、もし本当に買ってくれるならたっかい高級トリートメントかヘアマスクを買ってもらおう。そんなことを考えていると、弘翔の指先が愛梨の首筋に触れてきた。
「愛梨、首キレイだよなー」