約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「ところで愛梨、韓国語に興味ない?」
「へっ!?」

 急に話題を転換した友理香の台詞に驚き、再び声が裏返る。
 突然、何を言い出すのかと思えば。

「今回のプロジェクトが軌道に乗ってワークサイクルが安定したら、社員向けのビジネス語学講習会が始まる予定なの」

 企業側でも喋れる人材を育成しないとね、と言う友理香に、ぱちぱちと目を瞬かせる。

 確かにSUI-LENには語学に堪能な人材が少ない。だからこうして外部から通訳を派遣して貰っているが、それもずっと続く話ではない。

 いずれは派遣通訳を頼らなくてもプロジェクトを運用出来るように、在籍する社員にビジネス語学の知識を与え、他言語に触れる機会を設ける。そうする事で既存の社員を育成していく事も、彼ら派遣通訳の仕事の1つらしい。

「当初から事業計画に入ってたし、来月には講習会の案内と参加希望者の聞きとりがあると思うんだ」
「えっ、それ友理香ちゃんが講師するの?」
「そうだよ。だから愛梨も私が担当する講習会受けてみない?」
「へ……?」
「もちろん会社のためもあるけど、この機会に韓国語覚えてさ! 玲子と3人でアイドルのコンサート観に韓国旅行に行こーよ!」
「えっ……ええっ!?」

 友理香の提案につい驚きの声を上げてしまう。ほんの数分前に『雪哉の事は諦めない』と言ったばかりなのに、恋愛とアイドルのコンサートは別物らしい。まぁ、それはそうなのだろうけれど。

(ほ、ほんとタフだなぁ……)

 思わず苦笑いが漏れる。友理香の煌めきと行動力と体力は常に無尽蔵で、何から何まで愛梨の1つ歳下ではないみたいだ。
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