約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

対峙


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 ごく、とオレンジジュースを飲みながら、オープンラウンジのライトを見上げる。天井できらきらと光る小さな照明を見ていると、友理香の瞳が煌めく様子を思い出した。

(友理香ちゃん、ホント素直で純粋だな…)

 振られてもまだ同じ人を好きでいられるなんて。自分だったらとっくに心が折れて、別の恋を探してしまいそうだ。

(発想が若いのかな…)

 それに講習会の話ひとつとっても、みなぎる活力の質が違う気がする。とはいえ友理香との年齢は1つしか変わらないので、すぐに元々の潜在能力の違いなのだと気付く。あるいは遺伝子。

 結局遺伝子なのかな、と思うと、脳裏に雪哉を褒める母の顔が浮かんだ。自力ではどうしようもない現実を見た気がして、ちょっと笑ってしまう。

「楽しそうだね、愛梨」
「わ、ユキ!? びっくりした…」
「なんかいい事あった?」

 休憩していたところを、雪哉に見つかってしまう。だが愛梨はサボってだらけていた訳ではなく、臨時のシステムアップデートがあるためパソコンでの作業が出来ず強制的に休憩時間に入れられただけだ。ラウンジには愛梨以外にもマーケティング部の人たちがたくさんいて、各々束の間の休息を満喫しているところだった。

「ううん。何にもないよ」

 雪哉に顔を覗かれて、ふるふると首を振る。どうやら雪哉も水分を求めて、自販機が並ぶこの場所まで足を運んできたようだ。その手にはお茶のペットボトルが握られている。

(恋する表情……か)

 さり気なく隣に並んできた雪哉の横顔を眺めていると、ふと友理香に言われた言葉を思い出した。愛梨は雪哉といると嬉しそうだと言われた。雪哉も愛梨といると楽しそうだと言っていたけれど。

(うーん、全然わかんないなぁ)
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