約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

 清楚な白のブラウスに、落ち着いたブラウンのロングスカート。可愛らしいベリーショートヘア。ほんのりとメイクをしている横顔だと分かりにくいが、柔らかそうな唇と頬から顎にかけての輪郭には、雪哉がずっと探していた女性の面影がある。

 似ている――どころじゃない。

「愛梨…?」

 一生懸命に目の前の男性を見つめている女性に、恐る恐る声を掛ける。だが雪哉が声を掛けても、女性には反応がない。

 他人の空似という奴なのだろうか。それとも、愛しい幼馴染みに会いたいが為に、似ている女性が全て同じに見えるのだろうか。

 やってしまったか、と後悔を感じ始めたころ、女性がようやくこちらに顔を向けた。声を掛けた雪哉と同じようにゆっくりと顔を上げた女性と、思い切り目線が合う。

「!?」

 視線が合った女性の瞳は黒い水晶のように揺れ、その中にはやはり驚いた顔をした自分の姿が映っていた。

 驚いても仕方がないと思う。人違いだと思った女性は、実際には人違いではなく、雪哉がずっと探し続けていた上田愛梨その人だった。

(愛梨)

 愛梨も雪哉の存在に気付くと、驚いたうさぎのように目を真ん丸にした。だが言葉を発することが出来ずに、表情がそのまま固まってしまっている。対する雪哉も何か言葉をかけようと思うのに、喉の粘膜が乾いて貼り付いてしまったように言葉が出てこない。

「河上君? どうした?」

 声を掛けられ、はっと我に返る。

 愛梨から目線を外すと、すぐ傍にいた筈の専務は既にエレベーターを降り、少し離れたところから首を傾げてこちらを見ていた。

「あぁ、申し訳ありません」

 仕事中だったことを思い出す。厳密に言うと今日は挨拶に来ただけで、仕事をしている訳ではないが。
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