約束 ~幼馴染みの甘い執愛~

「うちが引っ越したの、ユキがアメリカに行ってから1年後だったから」
「なるほどな。それで手紙出しても、戻って来たのか」

 説明を聞いた愛梨が頷いたので、雪哉も納得して頷いた。

 割と早い段階で、再度拠点が変わることを聞かされていたので、連絡は落ち着いてからしようと思っていた。

 最初に手紙を出したのは、雪哉が日本を発って2年が経過した頃だった。出発前にアメリカの住所は教えていなかったが、雪哉が愛梨の住所をちゃんと記憶していれば問題ないと思っていた。けれどその不確実な自信が仇になったらしい。

「手紙、くれてたんだ」

 愛梨が少し驚いたように呟く。雪哉は頷いたが、顔を上げると愛梨は困惑したように表情を曇らせていた。

 今の話のどこに困るところがある? と疑問に思う。手紙が届かなかったのは愛梨の所為ではなく、ただの不運だ。時間はかかったがこうして再会できたのだから何も問題はない。そう思ったところで。

「そろそろ戻るね。私、午後からミーティングだから、資料の用意しなきゃ」

 愛梨が何かに突き動かされるように、唐突に席を立った。

「愛梨。待って」

 焦って立ち上がり、呼び止める。
 ようやく会えた幼馴染みと近況報告をして終わるつもりなどない。聞きたいことは山ほどあるが、今、確認しなければいけないことはただ1つ。

「この前、エレベーターで一緒にいた人……愛梨の恋人?」

 雪哉の問いかけに、愛梨が顔を背けて俯いた。悲しそうな愛梨の表情を見て、急に不安が押し寄せる。
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