しかくかんけい!

じゃあもう行くね、と終始穏やかな王子様は私を離さないまま歩き出す。


あふれそうだった感情はせき止まっていた。






非常階段のとびらの裏には誰もいない。

あたりまえだ、今は非常事態じゃないもん。



『この子、ホンメー』


どんなに見渡しても、私以外の“この子”はいなかった。



『ホンキだからあんまり邪魔しないで』


どんなに耳を澄ましても、君以外の誰の声でもなかった。


それって、どういうことなんだろう。

ホンメーっていうのは、
本命って訳でいいの?

ホンキっていうのは、
本気って意味でいいの?


ドキドキ早鐘を打つ心臓がうるさい。

いろんな感情が、頭でぐるぐる踊っている。


これはある意味、非常事態だ。


私の肩を抱き寄せたまま君は、ふう、とひとつため息を落として。


「ごめんね、あんな嘘ついて」


そんな言葉を放った。



「……う、そ、」


ホンメーも、ホンキも、うその言葉。


そっか。そうなんだ。

うそ、なんだ。


それでも、ドキドキ早鐘を打つ心臓が、本当にうるさい。



「そんなに怖かった?あいつら」

「い、いや、クリスマスだったから怖くなかったよ……」

「え、クリスマスの魔法的な?」

「か、髪がクリスマスカラーだなあって!」


くくっと笑ったしょーくんはすっと私の顔をのぞき込んで、言う。


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