しかくかんけい!
心がしずまる。
「ハナ」
落ち着いてその名を呼ぶと、彼女はうっすら水分の溜まった目を細めて。
眉尻を下げ、微かに震える唇を、ぎこちなく動かして。
「なにっ…」
切なく、儚く、見えない空気を振動させて。
「俺、耳が良いんだよね」
「みみ?」
「何でも、きこえる。何でも、音になる」
「なん、でも……」
人の話し声も、鳥のさえずりも、物の落下音も、ドアの開閉音も、時計の秒針の音も、
どんな些細な音でも頭に響いて……
「でも、音は、見えないんだよ」
……その姿は見えぬまま、消える。
「あ、あたりまえじゃんっ」
「見えないものが、形ないものが、この虚無を埋めることは、できない」
「きょむ、」
「鼓膜にさわるただの振動たちは、何も、なーんにも、できないんだよ」
「え……」
耳に触って、障って、消える。
いくら目を凝らしても、
それが形となって現れることは、
物体となって手に取れることは、ない。