しかくかんけい!



俺の顔の前で、ぱくっと何かをつかむような動作をした。


「なに今の」

「幸せが逃げちゃうから捕まえたの」

「……バカなの」

「見えないけど感じるの!」


はあ、というみっつめのため息を落とす。

そんなのいくつでもあげてやるよ。


目の前の小さな彼女は、そのまるい瞳の中に、大きな感情をにじませる。

じわり、ゆらり、という効果音が聞こえそうだ。



どうして俺は今、この存在を抱きしめてあげられないのか。

どうして俺は今、たった2文字の音が出せないのか。

どうして俺は今、こんなにも胸が苦しいのか。



わかっている。


彼女を俺のそばに置くと、とても罪悪感のようなものに苛まれるんだ。

彼女を自分のために利用しているような気がしてならない。

我欲を満たすために、触れて、抱いて、感じる行為が、物凄く汚いもののように思えるんだ。



そんなことが、彼女にとって、

幸せなはずがない。



「帰ろう」


穏やかに、優しく、理性の保たれた俺は言う。

そして、繋いだ手を、理性の保てない俺になる前に、引く。




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