SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
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——帰り道。


「…………」


あたしの気分はまた落ち込んでいた。

だって初めてなのだ。

あんなに得意だったペット捜しが今日初めて失敗した。

悲しそうなお婆ちゃんの顔が思い浮かぶ……


……誘拐か……


考えてみれば、なんとなくネコの気持ちが分かったような気がした。

突然、大好きな人と引き離されて、知らない所に連れてこられて……

その状況が、なんだか昔の自分と同じに思えて、ますます気持ちを暗くする。


「……はあ〜、」


一歩一歩、 歩くごとに心がどんどん沈んでいく……

どんどん、 どんどん沈んでいく……


「——美空?」


知った声が耳に届いた。

見ればあたしのアパートの前、湧人がそこへ立っている。


……あ、れ……


「……湧人……」


「遅かったね。 大丈夫?」


「……なんで……」


「だって今日は——」


湧人はスッと夜空を指差した。
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