花鎖に甘咬み



急に謝ってくる燈さんに、きょとんとする。



「別に、気にしてないよ、今更。『お前の顔には威厳が足りない』って散々言われてきたし、もう慣れてる」




よ、よかった……。

ほっと胸をなで下ろす。
傷つけてしまったわけではなかったらしい。




「それに、おじさん扱いされるよりは、若く見られたほうがマシだしね」



その言い草に、思わずちょっと笑ってしまった。


ほんとうの地雷は、“おじさん” なのかもしれない。

燈さんがそう言われることはきっとないだろうけれど。だって、ほんとうに若く見える。




「ちぃちゃんの反応があんまり素直でピュアだから、思わず試したくなっただけだよ」




悪びれず燈さんは笑った。

やっぱり〈赤〉のトップに立つような人にはとうてい見えない。


けれど、そこかしこで燈さんの名前が登場するということは、間違いなく燈さんは〈赤〉を牛耳るひとなわけで……。




「あの、燈さんは、どうして……」

「ん?」

「どうして、私たちのことを助けに来てくれたんですか?」




それに、今は、この空間を貸してくれているんだよね。

そこまで良くしてくれるのは、どうして?




「それは、他でもない真弓の頼みだからだね」




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