花鎖に甘咬み


「ちとせ」

「わっ!」



ぽん、と当然のように手渡されたのは妙に見覚えのある鉄パイプ。ひやりとしたそれは、私の手のひらにすんなりなじむ。


もう説明されなくたってわかるようになってきた。

武器にしろ、ってこと。

……ていうか、これ、どこから取り出したんだろう。



「3つ数えたら突撃だ」

「はい隊長!」

「誰が隊長だよ」



こつ、と軽く額を弾かれる。

わずかに緩んだように見えた表情も、一瞬にして引き締まって。



「いいか、1m以上離れるな。極力背中はくっつけてろ」

「わかった」

「ん。行くぞ」



ひと呼吸置く間もない。

3、2、1……とすぐさま始まったカウントダウンに耳をすませて。



「ゼロ」



静かなその合図で、たっと地面を蹴り込んだ。



「っ、おい 〈猛獣〉 だっ、がはっ」

「うるせえ。騒ぐんじゃねーよ」

「うっ、げほっ」

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