花鎖に甘咬み
「そこには誰かいるの?」
「いない。人を集めるとバレやすくなるからな。気配はなるべく削った方がいい。心細いか?」
「ううん、全然」
くっ、と真弓が肩を揺らした。
と、路地裏からガタンッと物音がする。
嫌な予感が────と思ったのは、私だけじゃなくて。
「回り込まれたか」
ぴくりと真弓が眉を動かした。
耳をそばだてると、ザリ……ザリ……と足音が聞こえる。
重なる音は、ひとりじゃないことを示していて。
いや、この量は。
「数人じゃ済まねえな。軽く10……いやもっとか?」
「う、うそ」
「囲まれる前に、こっちから仕掛けるしかねえな」
「ひええ……」
慣れてきたとはいえ、怖気づかないわけがない。