花鎖に甘咬み
真弓の言うとおりだ。
上まぶたと下まぶたが今にもくっついちゃいそう。
だって、今何時?
時計がないから正確にはわからないけれど、日付なんて余裕で変わっているだろうし、普段の私ならあたりまえに夢のなかにいる時間だと思う。
うとうとと瞬きを繰り返しながら、口を開く。
「だって……、どこに寝ていいか、わかんない……、ふあ」
舌がうまく回らなくて、しまいにはあくびまで零れてしまう。
「別に、ベッド使えばいいだろ」
「真弓に、聞かなきゃ、使っていいかわかんないじゃん……」
「お前、変なとこで律儀だな」
「へん、じゃないもん……」
「つか、ちとせ、髪濡れてる。乾かしてねえのかよ」
「乾かした……けど……、長いから、途中で……あきらめた」
「いや、諦めんなよ」
なぜか、真弓が離れていく。
急にいなくなると寂しくなって、眠気も相まって、体育座りのまま身を小さく縮こめていると。
1分も経たないうちに、真弓は戻ってきた。
その手にドライヤーを持って。
「ほら、頭貸せ」
「え……」
まさか、とぼんやりする思考回路で考える。
「乾かして、くれるの?」