竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 また遠くでカサリと音がした気がして耳を澄ます。雨の音に混じって確かに落ち葉を踏む音が複数聞こえる。それに、ハッハッという息づかい。

「これは……、魔獣?」

 ミレイナはパチッと目を開けて周囲を見渡す。大雨の中、暗闇にぼんやりと浮き上がる木々以外は何も見えない。けれど、確かに聞こえる複数の足音と息づかいが、ミレイナの頭に警鐘を鳴らした。

「逃げないとっ」

 でもどこへ?
 そこまで考えて、ミレイナは自分の背後にある木の枝を見上げると、力いっぱいジャンプした。
 ウサギ獣人だけに、ジャンプ力も優れているのだ。しかし、雨に濡れた枝は想像以上に滑りやすかった。
 片足がずるりと滑り落ちたその瞬間、その足に痛みが走る。

「ガオオォー」

 うなり声と共に、靴がもぎ取られ、血がしたたり落ちる。
 垂れていたスカートの裾が引きちぎられた。

 ミレイナはとっさにもう片方の足でその魔獣の顔を蹴り付けた。
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