竜王陛下のもふもふお世話係~転生した平凡女子に溺愛フラグが立ちました~
 けれど、一蹴怯んだように見えた魔獣はすぐにまたミレイナに襲いかかってくる。しかも一匹や二匹ではない。ハイエナのような姿をしており、おそらく群れになった肉食の魔獣だ。

「止めて! あっちに行って!」

 必死になって更に木を登り枝の上に避難したミレイナは下に向かって叫ぶ。けれど、興奮状態の魔獣達には通じない。

(どうしよう……。降りたら殺される……)

 雨で急激に体力は奪われていく。
 恐怖でガタガタと体が震え涙がこぼれ落ちそうになったとき、不意に魔獣達の様子が変わった。一様に背後を気にするような仕草を見せ、尻尾が下がる。

(なに? これは足音と、鳥の羽ばたき?)

 ミレイナが耳を澄ますと、僅かに聞こえてくるのは先ほど聞いたのより遥かに大きな足音と、上空を飛ぶ鳥の羽ばたきのような風を切る音だった。

 次の瞬間、目の前に颯爽と現れた巨大な狼に、目の前の魔獣達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。クウーンと哀れな鳴き声を上げている。

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