センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

奏斗のスマホが 鳴った時 

私は 小さく ため息をつく。


何故か あの人の電話だけは

直感で 察してしまう 私。


「ごめん…」

奏斗は そう言うと そっと部屋を出た。


「うん。うん……わかった。行くよ…」

アパートの 薄いドア越しに 奏斗の声が 聞こえる。


『行くんだ…』

私の心を 黒い雲が 覆って。


さっきまでの 楽しかった時間が

一瞬で 消えてしまう。


「ゴメン 葉月。俺 行かなきゃ。」

奏斗は 遠慮がちに 私に言う。

「そう。気をつけて。」

「えっ?」


私の言葉が 意外だったのか 

奏斗は 少し驚いた顔で 私を見た。

「電話 カンナさんでしょ?」

「うん。ゴメン。あいつ 自転車に ぶつかったから すぐ来てほしいって。」

「そう。早く 行ってあげたら?」

「うん。悪いな 葉月。後で 電話するから。」


奏斗は 何度も 謝りながら

私の部屋を 出て行った。






< 2 / 57 >

この作品をシェア

pagetop