センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

奏斗と手を繋いで 渋谷駅を 歩いていると

「奏斗」

正面から 歩いて来た女性が 驚いて立ち止る。

「あー。カンナ。」


私は そっと手を離し 奏斗の後ろに下がる。

「久しぶりじゃん。元気?」

「うん。奏斗も。彼女?」

カンナさんは 私の方に 目を向ける。


「そう。葉月。」

奏斗は 私の背を抱いて 前に出す。

「初めまして。」

「こちらこそ。奏斗 幸せそうで よかった。じゃあね。」


カンナさんは そう言って 私達から 離れて行った。


背が低くて 華奢な体形で。

長い髪は 綺麗に巻いていて。

鈴のような高い声で  ” 奏斗 ” と呼んだ。


私とは 全然違う…


男の人が 放っておけないタイプ。


「綺麗な人だね…」

奏斗と 歩き出して 私が言うと

「そうか?俺は 葉月の方が 好みだけど。」

と奏斗は 言ってくれた。


もう 大丈夫だよね?

奏斗は カンナさんに 引っ張られないよね?


私は カンナさんに 会ったことで

不安になってしまった。


男の人って カンナさんみたいな人が 好きだから。


それに カンナさんみたいな タイプの人は

簡単に 引き下がらない…


私の 本能が 警告を 発していた。





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