センチメンタル・ジャーニー ~彼を忘れるための一人旅

灯りを落とした バスタブの中

奏斗と 向かい合って 沈み。


「俺 所長に すごく怒られたんだ。葉月を これ以上 苦しめるなら 出入り禁止だって。」

「えーっ?所長 そんなこと 言ったの?」

「うん。葉月は 事務所の秘蔵っ子だから。大切にできないなら 別れてくれって言われた。」

「何か 嬉しいな。私 そんな風に 思ってもらっていたんだ。」

「葉月の性格が 良いからだろ?葉月と 連絡が取れないって言ったとき 事務所の人達 みんな すごく心配してた。川村さんなんか 俺に 何したの?って 詰め寄ってきたよ。」

「川村さんからも ラインが入っていて。でも 返信したの 次の日だったから。」

「カンナってさ。友達がいないんだ。俺 それがわかるから。余計に放っておけなかった。」

「でも。奏斗が いつまでも カンナさんを 守っていたから カンナさん 前に進めなかったんじゃない?」

「うん。所長にも 同じこと言われた。ただの 自己満足だって。カンナのことを 本当に 思うなら 突き放すべきだって。」

「私も そう思う。カンナさん 最後は 奏斗が 助けてくれるって 逃げ道があるから。恋人できても 奏斗と 比べちゃうだろうし。いつまでも 奏斗が 目の前にいたら 気持ち 切り替えられないじゃん?」

「カンナは 自己中で 思いやりがないから。俺を 振り回すことに 何も感じないのかもしれないけど。本当なら 嫌だよな?気持ちが離れた男を 困ったからって 呼び出すの。」

「そうやって 奏斗を試していたんじゃない?まだ 大丈夫。まだ 来るって。」

「俺 カンナに ちゃんと話して カンナの目の前で 電話も 着信拒否するから。これからは 俺が守るのは 葉月だって。ちゃんと 伝えるから。」

「私 信じるよ?」

「うん。信じて。俺 葉月が いなくなった時 カンナとか 比べられないくらい 怖かったから。もう 嫌だ…葉月と離れるなんて。」


奏斗は お湯の中で 私を ギュッと抱き締めた。


「奏斗…?」


触れた 奏斗に驚いて 私が 責めた目をすると

「仕方ないだろう。葉月が ここにいるんだから…」


通じ合った心は 身体の繋がりも 欲しくなっていく。

奏斗は 私を抱き上げて ベッドに運んだ。





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