❀🍞Pan・Rouge🍞 Ⅰ❀
―――それから、彼女ははっきりと断り、『―――ごめんね・・・』と言う。
『―――ごめんね・・・私も・・・このワンちゃんたち・・・結構、気に入っているし・・・大事な家族だから・・・渡すわけにはいかないわ・・・こういう事―――簡単に頼んじゃ駄目なの。』その言葉に、愛は『ちぇっ・・・』と言うと、そのまま何処かに、行ってしまった。
御店の従業員の二人は、顔を見合わせると、『―――貴方・・・看板娘がいるし、楽しいわね。』と菜緒は笑い、豆しばの華子を撫でていた。その様子に、智也は先程の事を思いだした。
彼女みたいな、子供が欲しい。子供らしくて、とてもやんちゃ坊主で、とても人間らしくて、酷く我儘-――。我儘でもあるが、聞き分けのある子供も、いいかもしれないが、その方が育てやすい。子育ても―――ちゃんと、育休取りながら、しっかりとやっていこう―――そう思っている筈だ。子供は四人欲しい―――。其の方が、幸せに育てられる筈―――。一人っ子は、とても可哀想だ。子供は欲しいが、最近、忙しくなってしまい、二人はそっちの方は、御無沙汰になってしまった。
『―――今日こそは・・・』
―――今日こそは・・・
思わずそう考えると、『―――何・・・職務中に・・・』と叫ぶ。菜緒は『―――どうしたの?智也―――。』と問うと、『―――否らしい事を、考えてるの?』と問う。
『―――否・・・ちょっと、お前の・・・否―――何でもない・・・』
『―――何よ・・・』
―――否らしい事・・・考えてるの?―――
―――一緒に・・・共に・・・・
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