やがて春が来るまでの、僕らの話。



「んー?」


作業の手は止まらないけど、返事が聞こえたから私はそのまま話し続けた。


「自分のやりたいことがちゃんとあって、それが出来ていて羨ましい」

「……」

「それってすごく意味のある人生だよね」



同じ人間なのにどうしてこんなに違うのかって、自分の存在意義が分からなくなる。

自分の作りだす作品で誰かを感動させたりできる南波くんの人生と、なんの意味も持たない私の人生とじゃ、差がありすぎて悲しくなる。

真剣にキャンバスに向き合っている彼の姿は、やっぱりすごく羨ましかった。


そんな私の気持ちを読んでか、南波くんがふふっと小さく笑った。



「ねぇハナエちゃん」

「うん?」

「なにがあるの?3月4日」

「え?」

「ごめん、気になっちゃって。それが聞きたくてここに来てもらったんだ」

「……」



少しだけ考えた。

南波くんになら、言ってもいいかな、って……


「……命日なんだ。陽菜の」


南波くんは手を止めることもせず、ただ絵を描き続けている。

私の言葉に動揺一つ見せないんだな。


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