やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ここ、俺の作業部屋なんだけどね。今個展に向けて絵を描きまくってて、ほとんどここに寝泊まりしてんの」
「そうなんだ」
「うん、だからいつでも遊びに来ていいよ」
南波くんの言葉を聞きながら、見渡せる創作物を見て回った。
壁に立てかけてある何枚もの絵はどれも本当にキレイで、木で出来た古いテーブルには材料が置いてある。
床に垂れたまま渇いた塗料が混ざりあった様子は、なんだかすごくかっこよくてオシャレなアートみたいだ。
「そこのソファーに座っていいよ」
部屋の隅には1人が膝を抱えて寝れるぐらいのソファーが置いてあって、そこにも塗料がついていた。
南波くんは電気ケトルで淹れたコーヒーを私に渡してすぐ、制作中のキャンパスに向かって作業を始めた。
魔法使いみたいな手からは色々な色が作り出されて、それが次第に形になって描かれていく。
これが彼の才能なのか、それとも努力の結晶なのかはわからないけど、どっちにしても本当に凄い。
「羨ましいな、南波くんのことが」
作業中は話しかけないほうがいいんだろうけど、思わず心の声が飛び出した。