やがて春が来るまでの、僕らの話。
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「ねぇ」
帰り道。すっかり日が暮れた暗い道を、若瀬くんが送ってくれている。
若瀬くんの家は柏木くんの家の近くだから、わざわざ申し訳ないって言ったけど、用事があるついでだからって。
「なに?」
雪はまだ降り続いているから、明日には本当に積もるかもしれない。
雪だるま、楽しみだな。
そんなことを考えながら、「ねぇ」に続く言葉を待った。
数秒後、私の横で若瀬くんは言う。
突然に、突拍子もないことを。
「ハナエのこと、好きになってもいい?」
聞こえた声に、足の動きがピタリと止まった。
「え、」
今、なんて……
「ていうか多分、もう好きになった」
好きに……なった?
「さっき笑ってる顔見て、なんかいいなって。雪見て嬉しそうにしてるの、可愛いなって。……一目惚れならぬ、笑顔惚れ?」
「……」
「そんな感じで、ハナエのこと好きだなって思った」
若瀬くんの言葉に、寒さをかき消す勢いで顔が熱くなるのを感じた。
どうしよう、恥ずかしい。
「か」
「……」
「帰るっ!」
慌ただしく、その場から逃げるように走り出した。
だってこんなの、どうしていいのかわからない。
十五歳。
高校一年生の、十二月。
生まれて初めて男の子に告白された夜だった……