やがて春が来るまでの、僕らの話。
「ハナエ?」
「あ、うん、私なら大丈夫だから、送ってあげて」
「まじごめん、また連絡するから、ほんと悪い」
「うん、大丈夫」
“やっぱりハナエには、何にも辛いことなく笑っててほしいから”
“ずっと、笑っててほしい…”
「、…」
遠くなっていく若瀬くんの背中を見つめて、何度も思う。
辛いよって、
苦しいよって、
助けてって……
なのにあの頃とはもう違う。
いつも傍にいてくれた若瀬くんとは、もう違う。
高校1年生のあの冬とは、違うんだ……
ポンって、後ろから肩を叩かれた。
驚くように心臓が跳ねて、恐る恐る振り向いてみる。
「、…」
振り向いた先に立っていた彼を見た瞬間、
堪えていた涙が、一気に溢れ出した……
「ハナエちゃん?」
「、…ッ、……」
我慢していたものがボロボロと溢れ出してきて、止まらない。
誰かに助けて欲しかった。
誰かに必要とされたかった。
それが律くんだったらいいなって、
私はいつから思っていたんだろう……
さっき、無意識のうちに操作していたスマホのディスプレイには、「律くん」の名前が表示されていた……